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解説 / 2026年9月
NOTES

東京23区の民泊規制を
読み解く。

隣にできる宿泊施設は、いつ営業できるのか。

2026年9月時点の区公式の案内に基づく整理。条例と運用は改正が続くため、各該当区ごとの判断は、最新条例と窓口確認が必要である。

民泊をめぐる議論では、「年間180日まで」という数字がしばしば注目される。しかし、隣の住宅が民泊として使われるかもしれない住民にとって、関心の中心は日数だけではない。

平日の静穏は守られるのか。夜間の出入りやごみ出しはどうなるのか。学校の近くで、不特定の宿泊者が出入りすることはあるのか。トラブルが起きたとき、誰に連絡すればよいのか。

こうした問題を考えるには、まず「民泊」という言葉の内側にある制度の違いを理解する必要がある。本稿では、国の制度を起点に、東京都と23区の役割を整理する。そのうえで、各区の住宅宿泊事業に対する制限を比較する。

重要なのは、隣にできる宿泊施設が、必ずしも住宅宿泊事業法に基づく「届出住宅」とは限らないという点である。

1.そもそも「民泊」には3つの制度がある

いわゆる民泊には、主に3つの制度がある。住宅宿泊事業法に基づく届出住宅、旅館業法に基づく許可施設、国家戦略特区制度を利用した特区民泊である。いずれも宿泊サービスに関係するが、法的な位置づけは異なる。営業できる日数、必要な手続、行政による監督、自治体条例の適用も同じではない。

住宅宿泊事業法:年間180日以内の届出住宅

住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業は、一定の要件を満たす「住宅」を使って宿泊サービスを提供する制度である。事業を始めるには、原則として自治体への届出が必要となる。

宿泊日数は、届出住宅ごとに、4月1日正午から翌年4月1日正午までの期間で180日を超えることができない。この場合の1日は、正午から翌日の正午までとして数えられる。対象となる住宅には、台所、浴室、便所、洗面設備などの設備に加え、生活の本拠として使用されていることなど、法令上の要件がある。

ただし、全国一律に年間180日まで営業できるわけではない。住宅宿泊事業法18条は、生活環境の悪化を防ぐ必要がある場合、政令の基準に従い、条例によって区域や実施期間を制限できると定めている。23区では、各区がこうした条例を制定している。したがって、住宅宿泊事業法の届出住宅であっても、所在地によって営業できる曜日や期間が変わる。

旅館業法:180日の上限はない

旅館業法に基づく宿泊施設は、自治体の許可を受けて営業する。住宅宿泊事業法のような年間180日の上限はない。ただし、旅館業法の許可を受ければ、ほかの規制を無視できるわけではない。用途地域、建築基準法、消防法、旅館業の構造設備に関する基準、自治体の条例など、複数の法令が関係する。施設の用途が、建築上も住宅として扱われるとは限らない。

住宅宿泊事業法の180日制限を超えて宿泊サービスを提供する場合、旅館業法上の許可が必要となるかどうかが問題になる。ただし、どの制度が適用されるかは、施設の名称ではなく、契約や利用の実態などを踏まえて判断される。

特区民泊:国家戦略特区に基づく認定

特区民泊は、国家戦略特区制度に基づく認定を受けて運営される。住宅宿泊事業法の年間180日制限は適用されないが、最低滞在日数などの条件がある。東京23区では、大田区が特区民泊を実施している。したがって、大田区では、住宅宿泊事業法に基づく届出住宅と、特区民泊の認定施設が併存する。同じ「民泊」と呼ばれていても、適用される制度が異なれば、営業日数や行政の関与も異なる。

2.国、東京都、区。それぞれ何を決めるのか

民泊をめぐる議論では、国、東京都、区の役割が混同されることがある。住宅宿泊事業法に基づく事業の制限を理解するには、それぞれの役割を分けて考える必要がある。

国:制度の枠組みを定める

国は、住宅宿泊事業法、政令、省令などによって、住宅宿泊事業の基本的な枠組みを定める。年間180日の上限や、住宅の要件、事業者の義務、自治体が条例で区域・期間制限を設ける際の枠組みなどが、ここに含まれる。

東京都:制度案内と関連分野の行政を担う

東京都は、制度に関する案内を行うほか、建築、消防、マンション施策など、住宅宿泊事業に関連する分野で行政上の役割を担う。ただし、東京都が23区すべてに同じ「泊まれる曜日」を設定しているわけではない。

区:届出の受理と条例による制限

東京23区では、住宅宿泊事業の届出の受理や、住宅宿泊事業法18条に基づく区域・期間制限などを、各区が担う。そのため、同じ東京都内でも、区が変われば適用されるルールが変わる。「東京都の民泊規制」と一括りにするだけでは、実際にどの施設がいつ営業できるのかは分からない。必要なのは、施設の所在地を特定し、その場所に適用される区の条例を確認することである。

3.2026年の制度変更。国の助言と区の条例は別物

2026年7月、観光庁等は自治体に対し、住宅宿泊事業の適正な運営に関する技術的助言を示した。ゼロ日規制やICTを活用した管理などが論点となったが、技術的助言と条例そのものは別である。

国が自治体に助言を示したからといって、直ちに各区の条例が変わったり、区の権限が自動的に拡大したりするわけではない。実際にどの区域で、いつまで住宅宿泊事業を実施できるのかは、各区の条例や規則、施行日、経過措置などによって決まる。国の方針と、個別の区で適用される規制は、分けて確認する必要がある。

4.東京23区の民泊規制を比較する

23区の住宅宿泊事業に対する姿勢は、一律ではない。住居専用地域など特定の区域で平日の実施を制限する区もあれば、区内全域で期間制限を設ける区もある。家主の居住状況や管理体制によって扱いを分ける区もある。条例の改正時期によっては、新規の届出住宅と既存の届出住宅で扱いが異なることもある。以下では、各区の制度上の特徴を整理する。

千代田区|学校・文教環境を重視した区域規制

千代田区では、区内一律の制限ではなく、区域によって扱いが分かれる。文教・学校周辺では、家主が居住する住宅であっても、日曜正午から金曜正午まで住宅宿泊事業を実施できない。2026年7月の改正では、同じ区域における常駐型の扱いも厳格化された。どの制限が適用されるかは、施設の所在地だけでなく、区域の指定と事業形態を確認する必要がある。

千代田区の公式案内

中央区|区内全域で週末を中心に実施

中央区では、区内全域を対象に、土曜正午から月曜正午までを中心とした期間制限が設けられている。家主の居住の有無によって、平日に実施できる日数が大きく増える仕組みではない。中央区で住宅宿泊事業の可否を確認する際には、区内一律の期間制限を前提に、個別の届出状況や適用される経過措置を確認する必要がある。

中央区の公式案内

港区|家主不在型と家主居住型で扱いが異なる

港区では、住居専用地域と文教地区における家主不在型の住宅宿泊事業について、春・夏・冬の休業期間を除き、実施できる期間を制限している。一方、同じ区域であっても、家主居住型はこの制限の対象外となる。「港区では民泊が厳しい」と一括りにするのではなく、区域と家主の居住状況を分けて見る必要がある。

港区の公式案内

新宿区|住居専用地域に平日制限

新宿区では、住居専用地域において、月曜正午から金曜正午まで住宅宿泊事業を実施できない。一方、それ以外の用途地域については、曜日による同様の制限は設けられていない。住宅地での実施禁止を検討する動きが報道されることもあるが、条例が成立し、施行されるまでは、規制が確定したかのように扱うべきではない。新宿区で施設の営業可能日を判断する際には、用途地域と現行条例を確認する必要がある。

新宿区の公式案内

文京区|学校・文教環境に関わる区域指定が重要

文京区では、住居専用地域、住居地域、準工業地域、文教地区において、日曜正午から金曜正午まで住宅宿泊事業を実施できない。文京区の場合、用途地域だけでなく、文教地区に該当するかどうかも確認すべき要素となる。同じ区内でも、区域の指定によって適用されるルールが変わるため、所在地の確認が欠かせない。

文京区の公式案内

台東区|2026年10月1日以降の届出に新たな制限

台東区は、2026年10月1日以降に受理された届出住宅について、家主居住型・家主不在型のいずれについても、平日の実施を制限すると案内している。一方、2026年9月30日までに受理された届出住宅については、この改正の対象外となる。台東区では、施設の所在地だけでなく、届出がいつ受理されたかが、適用されるルールを左右する。新規の届出住宅と既存の届出住宅を同じ基準で扱わないことが重要である。

台東区の公式案内

墨田区|監視指導の強化と新たな期間制限

墨田区では、2026年4月1日に、住宅宿泊事業と旅館業に関する監視指導を強化する条例が施行された。主な対象は、施行日以後に受理された施設とされている。ただし、具体的な曜日制限や適用範囲については、施設の届出時期や区域などによって確認すべき点がある。墨田区で営業可能日を判断する場合は、区の最新案内と条例・規則を照合する必要がある。

墨田区の公式案内

江東区|区内全域で平日の実施を制限

江東区では、区内全域で、月曜正午から土曜正午まで住宅宿泊事業を実施できない。ただし、国民の祝日の正午から翌日正午までは、この制限の対象外とされている。豊洲など特定のエリアだけが例外となるわけではなく、区内全域に同じ考え方が適用される。江東区で住宅宿泊事業の可否を確認する際には、区域による違いよりも、区内一律の期間制限を確認することが出発点となる。

江東区の公式案内

品川区|商業系用途地域とそれ以外で扱いが異なる

品川区では、商業地域と近隣商業地域について、文教地区を除き、平日の実施を制限していない。それ以外の区域では、土曜正午から月曜正午までを中心とした期間制限が設けられている。したがって、品川区では「商業地域にあるかどうか」が重要な判断材料となる。ただし、文教地区の指定や施設の届出時期などによって扱いが変わる可能性があるため、用途地域だけで結論を出すことはできない。

品川区の公式案内

目黒区|区内全域で平日の実施を制限

目黒区では、区内全域で、日曜正午から金曜正午まで住宅宿泊事業を実施できない。区域によって平日の制限が異なるというより、区内一律の期間制限が基本となる。目黒区で施設の営業可能日を確認する場合は、個別の区域差を探すよりも、まず区全体に適用される条例上の制限を確認する必要がある。

目黒区の公式案内

大田区|住宅宿泊事業法と特区民泊が併存

大田区では、住宅宿泊事業法に基づく届出住宅と、国家戦略特区制度を利用した特区民泊が併存している。住宅宿泊事業法に基づく事業では、学校周辺おおむね100メートルの区域における家主不在型について、平日の実施が制限される。一方、特区民泊には、住宅宿泊事業法の年間180日制限は適用されない。大田区では、施設がどの制度に基づいて運営されているかによって、営業可能日や適用されるルールが変わる。「大田区の民泊」と一括りにせず、住宅宿泊事業法上の届出住宅なのか、特区民泊の認定施設なのかを確認する必要がある。

大田区の公式案内

世田谷区|現行条例と2026年9月の素案を分けて見る

世田谷区では、現行制度上、住居専用地域において、月曜正午から土曜正午まで住宅宿泊事業を実施できないことが原則となっている。一方、2026年9月に公表された素案では、住居専用地域における平日の制限を残しつつ、家主居住型など一定の要件を満たし、適正な運営を確認できる場合に、年間180日の実施を認める方向が示されている。ただし、これは現時点で施行された条例ではない。意見募集の期間は2026年9月15日から10月6日まで、施行目標は2027年4月1日とされているが、今後の手続によって内容が変わる可能性がある。世田谷区については、現行制度と、今後の改正案を明確に分けて扱う必要がある。

世田谷区の公式案内

渋谷区|住居地域・準住居地域も制限区域に

渋谷区では、2026年7月の改正により、住居地域と準住居地域も住宅宿泊事業の制限区域に含まれることとなった。例外は、家主居住型など一定の事業形態に限られる。渋谷区で施設の営業可能日を判断するには、従来の住居専用地域だけでなく、住居地域や準住居地域に該当するかどうかも確認する必要がある。区域指定と事業形態を組み合わせて判断することが重要である。

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中野区|住居専用地域では週末・祝日を中心に実施

中野区では、住居専用地域において、金曜、土曜、日曜および祝日を中心に住宅宿泊事業が認められる仕組みとなっている。一方、同居型については、区長の許可があれば、平日の実施が可能となる場合がある。中野区では、区域だけでなく、家主の居住状況と必要な手続の有無が重要となる。

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杉並区|家主不在型を中心に曜日制限

杉並区では、住居専用地域における曜日制限が、家主不在型の住宅宿泊事業を対象としている。家主居住型については、同様の曜日制限が設けられていない。このため、杉並区では、同じ住居専用地域にある住宅であっても、家主が居住しているかどうかによって扱いが変わる。なお、2026年5月に行われた21区による国への要望には、杉並区は参加していない。ただし、要望への参加の有無と、個別の条例上の規制内容は別の問題である。

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豊島区|監督・履行確保を重視し、期間制限も導入

豊島区では、定期報告を怠るなどした事業者に対して改善命令を出し、改善が見られなかった15事業者23施設に対し、2026年7月1日から1年間の業務停止を行った。これは、条例上の義務を守らない事業者に対する履行確保の措置として注目される。また、2026年12月16日からは、区域・期間制限も適用される予定となっている。豊島区では、営業できる曜日だけでなく、事業者による報告、管理、周知などの義務が実際に履行されているかも重要な論点となる。

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北区|一律の曜日制限より、周知と現地確認

北区では、一律の曜日制限は設けられていない。一方、近隣への周知や現地確認など、事業の適正な運営を確保するための措置が行われている。北区で住宅宿泊事業をめぐる問題を考える場合、営業日数の制限だけでなく、施設の管理体制や近隣への情報提供が重要となる。「曜日制限がない」ことは、管理上の義務や近隣対応が不要という意味ではない。

北区の公式案内

荒川区|区内全域で平日の実施を制限

荒川区では、区内全域で、月曜正午から土曜正午まで住宅宿泊事業を実施できない。祝日は制限の対象外とされている。区域による細かな違いよりも、区内全域に適用される期間制限が基本となる。荒川区で営業可能日を確認する際には、区全体の条例上の制限と、個別の届出時期・経過措置を確認する必要がある。

荒川区の公式案内

板橋区|住居専用地域で平日の実施を制限

板橋区では、住居専用地域において、日曜正午から金曜正午まで住宅宿泊事業を実施できない。一方、家主居住型については、この制限の対象外となる。板橋区では、用途地域と家主の居住状況を組み合わせて確認することが重要となる。

板橋区の公式案内

練馬区|家主居住型にも住居専用地域の制限

練馬区では、住居専用地域において、月曜正午から金曜正午まで住宅宿泊事業を実施できない。この制限は、家主居住型にも適用される。家主が居住しているかどうかによって、住居専用地域での平日の実施が可能になる仕組みではない。練馬区で営業可能日を確認する際には、住居専用地域に該当するかどうかが重要な判断材料となる。

練馬区の公式案内

足立区|住居専用地域に平日制限。学校周辺にも注意

足立区では、住居専用地域において、月曜正午から金曜正午まで住宅宿泊事業を実施できない。年末年始についても、一部の期間が制限される。また、学校周辺では追加の制限が適用される場合がある。足立区で施設の営業可能日を判断する際には、用途地域だけでなく、学校との位置関係や、年末年始の扱いも確認する必要がある。

足立区の公式案内

葛飾区|新規施設への期間制限と経過措置

葛飾区では、2026年4月施行の条例により、新規の住宅宿泊事業に期間制限が設けられている。家主居住型、管理者が常駐する施設、商業地域などについては、例外となる場合がある。一方、2026年3月31日までに届出が行われた住宅については、経過措置が設けられている。葛飾区では、区域や事業形態に加え、届出がいつ行われたかが適用される規制を左右する。

葛飾区の公式案内

江戸川区|2026年7月施行。既存施設には経過措置

江戸川区では、2026年7月1日に住宅宿泊事業に関する条例と規則が施行された。区は、2026年6月30日までに住宅宿泊事業法3条に基づく届出があった住宅について、実施制限に関する経過措置があると案内している。江戸川区で営業可能日を確認する際には、条例の内容だけでなく、施行日と届出の受理時期を確認する必要がある。新たな規制が導入された場合でも、既存の届出住宅に同じルールが直ちに適用されるとは限らない。

江戸川区の公式案内

5.23区の規制をどう整理すればよいのか

23区の制度は、単純に「厳しい区」と「緩い区」に分けられるものではない。規制の仕組みは、主に次のような観点から整理できる。

区域によって平日の実施を制限する区

住居専用地域、住居地域、文教地区、学校周辺など、特定の区域を対象に期間制限を設ける区がある。該当する区では、施設の所在地と用途地域、区域指定の確認が重要となる。

家主の居住状況や管理体制によって扱いが変わる区

家主居住型と家主不在型で制限を分ける区もある。また、管理者の常駐や、一定の管理体制を例外の条件とする場合もある。同じ区域にあっても、誰が住み、誰が管理するのかによって適用されるルールが変わることがある。

区内全域で期間制限を設ける区

江東、中央、目黒、荒川などでは、特定の区域に限らず、区内全域を対象とした期間制限が設けられている。この場合、区内のどの場所にあるかという区域差よりも、区全体に適用される曜日・期間のルールが重要となる。

営業日数よりも、管理・監督上の措置が重要となる区

豊島区や北区のように、定期報告、近隣周知、現地確認、改善命令など、事業者の義務の履行確保が重要な論点となる区もある。ただし、期間制限がないことと、事業者の義務が少ないことは同じではない。

特区民泊が併存する区

大田区では、住宅宿泊事業法に基づく届出住宅に加え、特区民泊の認定施設が存在する。制度が異なれば、営業日数や適用される規制も異なるため、施設の制度上の位置づけを確認する必要がある。

6.2026年、23区の対応は変わりつつある

2026年5月、世田谷区と杉並区を除く21区が、国に対して住宅宿泊事業の適正化を求める要望を行った。世田谷区自身も、両区がこの要望に加わっていないと説明している。この動きは、住宅宿泊事業をめぐる自治体側の問題意識を示すものといえる。ただし、国への要望と、各区の条例上の規制は別の問題である。要望に参加したかどうかによって、直ちに営業可能日が決まるわけではない。

また、営業できる日数が比較的多い区であっても、近隣への周知、標識の掲示、苦情対応、定期報告などの義務がなくなるわけではない。「規制が薄い」という評価は、「近隣説明が不要」「管理が不要」という意味ではない。

7.条例以外にも確認すべきことがある

住宅宿泊事業の適法性を確認する際、区の条例だけを見て判断するのは不十分である。実際の施設については、少なくとも次の事項を確認する必要がある。

施設の制度上の位置づけ

その施設は、住宅宿泊事業法に基づく届出住宅なのか。旅館業法の許可施設なのか。特区民泊の認定施設なのか。まず、どの制度に基づいて運営されているかを特定する必要がある。

用途地域と区域指定

住宅宿泊事業法に基づく届出住宅であれば、所在地の用途地域や、学校・文教地区などの区域指定が問題となる。同じ区内でも、区域が異なれば適用される制限が変わることがある。

家主の居住状況と管理者の所在

家主居住型か、家主不在型か。管理者はどこにいるのか。緊急時やトラブル発生時に、誰が対応するのか。区によっては、これらが営業可能日や例外規定の適用に関わる。

届出・許可の時期

条例改正によって、新規施設と既存施設で適用されるルールが異なる場合がある。そのため、届出や許可がいつ行われたか、改正条例の施行日と経過措置を確認する必要がある。

マンションの管理規約

分譲マンションでは、自治体の条例とは別に、管理規約が問題となる。条例上は住宅宿泊事業が可能であっても、管理規約で禁止されていれば、規約違反となる可能性がある。これは東京都や区が推奨するかどうかという問題ではなく、区分所有法や管理規約に関わる問題である。マンションの場合、行政上の適法性と、管理規約上の適否を分けて確認しなければならない。

標識と苦情窓口

住宅宿泊事業では、標識の掲示や近隣への情報提供、苦情への対応などが問題となる。近隣住民にとっては、営業日数だけでなく、トラブル発生時の連絡先が明確になっているかどうかも重要である。

8.家具付き賃貸やサービスアパートメントは民泊なのか

月単位の家具付き賃貸やサービスアパートメントについても、注意が必要である。「サービスアパートメント」「家具付き賃貸」「短期賃貸」といった名称だけで、住宅宿泊事業法の対象になるかどうかが決まるわけではない。どの制度が適用されるかは、契約の内容、利用期間、利用実態、提供されるサービスなどを踏まえて判断される。

そのため、月単位の家具付き賃貸やサービスアパートメントが、すべて住宅宿泊事業法上の届出住宅に該当するわけではない。逆に、名称が「賃貸住宅」や「サービスアパートメント」であっても、実態によっては別の法令上の検討が必要となる場合がある。施設の適法性を確認する際には、名称ではなく、どのような契約に基づき、どのような形で利用されているのかを見る必要がある。

9.結論:隣戸の適法性は、区名だけでは決まらない

民泊をめぐる規制は、区ごとに異なる。しかし、区の名前だけを見て、隣の施設が営業できるかどうかを判断することはできない。確認すべきなのは、施設の所在地、用途地域、適用される区域指定、家主の居住状況、届出や許可の時期、そしてマンションであれば管理規約である。施設の制度上の位置づけによっては、住宅宿泊事業法とは別の規制が適用されることもある。

住民にとって重要なのは、「その区は民泊に厳しいか、緩いか」という評価ではない。目の前の施設に、どの制度が適用され、どのルールの下で営業しているのか。そこを具体的に確認することである。

条例は改正される。経過措置の有無によっても扱いは変わる。最終的には、施設の所在地と届出・許可の状況を特定し、自治体の最新の条例や案内に照らして確認する必要がある。

全国の手続の枠組みについては、観光庁の民泊制度ポータルサイトで確認できる。